【法文】
学説彙纂第1巻第2章第2法文第24項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Pomponius libro singulari enchiridii
ポームポーニウス(法学通論単行書)
【翻訳】
国民が法典の制定を決定したる時に当り総ての政務官を辞職せしむべき法案国民会に提出せられ之に依りて一年を任期とする十人官の設置を見たり然れども十人官は任期満了後尚其の職に止まらんと図り且つ圧制の処置を為し又自己及び与党に於て永く国政を掌握せんが為め諸政務官を選定することを欲せず加ふるに虐政を極めたりしかば遂に軍隊をして羅馬国を脱離するの止むなきに至らしめたり。此の国民分離の動機を与へたるはヴエルーギニウスと称する者なりと云ふ、是れより先きアープピウス・クラウヂウスは自ら古法を踏襲して十二表法中に載せたる規定を蔑視しヴエルーギニウスの女の身分訴訟中一時同女の監視をヴエルーギニウスに許さず而して自ら第三者に命じて同女を自己の奴隷なりと主張せしめ而して其の主張を容認し斯くて此の処女に対する恋慕の情に迷はされ遂に正邪の道を悉く覆滅したり、ヴエルーギニウスは如上の事実を知るや太古より伝来せる規定が其の女の身に付て遵守せられざるを激怒し(例へば羅馬国第一次の執政官ブルツスの如きはヴヰテルリーの奴隷ヴヰンデークスの身に付て一時自由を許可したり此の奴隷は嘗て其陰謀事件を告発して之を発覚せしめたる者なり)且つ処女の貞操を其の生命よりも尊重すべきものと為し意を決して自ら屠獣者の店に到り一個の包刀を奪ひ来りて其の女を刺殺し以て其の将に受けんとせる凌辱を免かれしめ而して後、鮮血未だ乾かざるに早くも遁れて戦友の群に投じたり、当時軍附は悉く戦争の為め軍団を編成してアルギヅムに屯在したりしが全軍直ちに其の指揮を捨て去りてアヴエンチーヌスの丘上に軍旗を樹てたり因て羅馬市に在りたる平民も亦皆直ちに軍隊に尾して此の丘上に集まれり是に於て国民の同意を以て十人官は『或は追放せられ』 [1]或は獄舎に投ぜられて殺されたり、而して羅馬国の組織は茲に全く旧態に復せり。
【注】
[1]訳註、モムゼンの挿入
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】