【法文】
学説彙纂第1巻第6章第8法文序項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed.
14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Idem (Ulpianus) libro
uicensimo sexto ad Sabinum
同人(サビーヌス註解第二十六巻)
【翻訳】
父が精神病と為ると雖も子は尚、其の父の権力権に服す、此の規則は数人の卑属を自己の権力内に有する総ての尊属にも之を適用す、何故となれば権力権は慣習の承認したるものにして権力権者は其の卑属が普通の事由の発生に因りて其の権力を脱離するに非ざれば此等の卑属を其の権力内に保持するものなるが故に上記の場合に卑属が依然其の尊属の権力権に服することは疑を容るべきの余地を存せざればなり。是を以て父は精神錯乱前に出生したる子に対して権力を有するのみならず又精神錯乱前に懐胎せしが精神錯乱中に出生したる子に対しても尚且つ権力を有す。然れども父が精神錯乱者たる間に其の妻を懐胎せしめたるときは出生児が父の権力権に服するや否やは之を一考せざるべからず、固より精神錯乱者は妻を娶ることを得ずと雖も婚姻関係は之を継続することを得、果して然らば子は其の権力に服すべし。之と同じく若し妻が精神錯乱者たるときは其の精神錯乱前に懐胎したる子は出生せば夫の権力に服すべし、又若し夫が精神錯乱者に非ずして精神錯乱中の妻に懐胎せしめたるときは其の子は出生すれば父の権力に服すべきこと疑なし何故となれば両人間の婚姻関係は持続すればなり。又精神錯乱者も尚、多少の意思の残存するのものと見らるるが故に若し夫妻共に精神錯乱して同棲中に妻が受胎の事実発生するときは出生児は父の権力に服すべし。何故となれば婚姻関係は一方の配偶者が精神錯乱すと雖も存続するものなれば双方が精神錯乱すと雖も亦存続すべければなり。
【注】
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】