【法文】
学説彙纂第2巻第13章第10法文第3項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Gaius libro primo ad edictum prouinciale
ガーイウス(県告示註解第一巻)
【翻訳】
原告は自己に計算書の提示あるが為めに有する利害関係額を請求するの訴権を有するが故に、若し或者が被告たる訴訟に於けると原告たる訴訟に於けるとを問はず自己に有利なるべき計算書なきが為めに敗訴の判決を受けたるときは之が為めに損失したるものを此の訴権を以て回復すべき結果を生ず。然れども是れ果して実際に適する規則なりや否や吾人は之を考究せざるべからず、事実問題として今若し原告と銀行業者との間の事件を審判する裁判官の目前に於て曩に若し計算書の提示を得たりせば既に敗訴したる訴訟に於て勝訴し得べかりしことを証明し得るとせば其の敗訴したる訴訟の当時に於ても計算書なくして自己の論点を証明し得たりしものと言はざるを得ず、故に若し原告が之を証明せざりしか縦ひ之を証明したるも裁判官が其の証明に耳を傾けざりしときは原告は唯、自己を憾むか又は裁判官を責むべきのみ。然れども此の論は非なり。何故となれば原告は銀行業者を訴ふるまでに被告自身より計算書の提示を受けたるか若は其の他の方法に依りて計算書を取得したることあり得べく又或は或理由の為め従前の機会に[1]利用することを得ざりし所の他の証書若は証人に依りて若し自ら計算書を有したらんには勝訴したるべきことを証明し得ることあり得べければなり。同一の理由に拠り証書が盗取せられ又は破棄せられたる場合には不当利得返還請求訴権又は過失に因る損害に付ての訴権を生ず、何故となれば或者が其の証書を取去られたるに因り従前には或事実を証明することを得ずして敗訴したりと雖も其の事実は前には証拠方法として使用することを得ざりし所の他の証書又は証人に依り後の訴訟に於て之を証明することを得べければなり。
【注】
[1]訳註、前訴訟を指す
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】