【法文】
学説彙纂第2巻第14章第27法文第2項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Paulus libro tertio ad edictum
パウルス(告示註解第三巻)
【翻訳】
請求訴訟を提起せざるべきことを約束したる者が其の後請求することあらんことを合意したる場合には前の約束は後の約束に因りて取消さる、然れども一の問答契約が「当事者の意思に因り」後の問答契約の為めに取消さるるが如く当然に後の約束に因りて取消さるるに非ず何故となれば問答契約は法律関係を目的とし約束は事実関係を目的とすればなり、故に本問の場合に於ては抗弁は反抗弁に依りて排斥せらるるものとす。同一の理由に依り最初の約束が保証人の利益と為らざることも生じ得べし。然れども約束及び合意が訴権其ものを消滅せしめ得べき如き場合例へば名誉毀損訴権の場合なるときは当事者は請求訴訟を提起することあるべしとの後日の約束に因りて之を為すことを得ざるべし、何故となれば元来の訴権は既に消滅し且つ後日の約束は新たに訴権を附与するの効力なければなり、名誉毀損訴権の発生原因は約束に非ず侮辱行為なり。若し約束及び合意が全債務関係例へば売買より発生する訴権を消滅せしむる場合に於ては誠意契約に付ても規則は同一なりと云ふことを得べし、何故となれば新約束は旧債務関係を復活せしめず唯別個の新契約を成立せしむるに過ぎざればなり。然れども若し全契約を消滅せしむるが為めに非ず唯、約款の効力を軽減せんが為めに[1]後日に至りて合意及び約束を為したるときは後の約束は当初の契約を復活せしむることを得。「此の如き事実は嫁資に関する或種類の訴権に付ても生じ得べし」。例へば婦女が直に嫁資の返還を受くべしとの約束を為したる後に至りて更に「法定の期日に」之を受くべしとの約束を為したる場合の如し、此の場合には嫁資は正規の法律状態に復帰すべく又嫁資の法律状態は約束に因りて婦女の為めに不利と為りたりと云ふことを得ず、何故となれば嫁資に関する訴権が法定の性質に復帰するときは常に嫁資の状態が不利を来たすに非ず其の正規の性質に復帰するものなればなり以上の見解は吾がスカイヴオラも亦之を是認したり。
【注】
[1]訳註、買主が売主に対して代金を贈与せんことを求め、其の承諾を得たるが如き場合は本文に謂はゆる「約款の効力を軽減せんが為めに」の例なり(C. I. G. 288)
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】