【法文】
学説彙纂第2巻第14章第7法文第5項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Ulpianus libro quarto ad edictum
ウルピアーヌス(告示註解第四巻)
【翻訳】
然れども単なる約束も時としては訴権の原因を構成することあり[1]例へば誠意裁判に於けるが如し、何故となれば約束及び合意が誠意裁判の目的となるは衆口一致する所なればなり。但し此の点次の如く了解すべきものとす即ち契約の締結に継続して直ちに為されたる約束は其の契約の一部を為し原告の訴権の原因とも為るべしと雖も、若し契約の締結より時を経て約束ありたるときは其の約束は契約の一部を為さず且つ努力を生ぜざるべし。例へば離婚後、若干時を経過して「法定の猶予期間の満了」を待たずして直ちに嫁資の返還あるべき約束が合意せられたる場合の如し、此の約束は有効ならざるべし、然らざれば訴権が単なる約束より発生することとなるべし、マルキアーヌスの書にも同一の説を記す。又若し後見訴訟に関して法定の利率を超過する利息を給付すべしとの合意ありたるときは其の合意は有効ならざるべし、然らざれば訴権が約束より発生することとなるべし、何故となれば契約の条項を為す約束換言すれば契約締結の当初に合意せられたる約束は契約の構成部分なればなり。予の知る所にてはパーピニアーヌスも之と同一の解答を為し、且つ曰く売買締結の後に時を経て契約の性質と異なれる或合意ありたるときは買主は其の合意に基き買主訴権を以て訴を起すことを得ず是れ右と同じく訴権は約束より発生せずと云ふの規則に拠るものなりと。是れは総ての誠意訴権に付て然りと云はざるべからず。然れども被告側に於ては約束は有効なるべし、何故となれば契約締結の後に附加せらるる約束と雖も抗弁権を発生するを以て慣例とすればなり。
【注】
[1]訳註、此の原文の解釈に付てはGlück, 4, S. 259 Anm, 84, 1843 参照
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】