【法文】
学説彙纂第3巻第1章第1法文第5項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Ulpianus libro sexto ad edictum
ウルピアーヌス(告示註解第六巻)
【翻訳】
次に法務官は他人の為めに裁判上の申立を為し得ざる者に付て告示す、此の告示に於て法務官は性及び不幸を原因として他人の為めに裁判上の申立を為し得ざる者を定め又汚辱行為ある者に汚点を附したり。性に付ては法務官は婦女が他人の為めに裁判上の申立を為すことを禁ず。其の理由は婦女は其の性に適合する淑徳を無視して他人の事件に関与せしむべきものに非ず又男子の鞅掌すべき職務を執らしむべきものに非ずと云ふに在り。此の禁止に動機を与へたる者は極めて無恥なる婦女カルフワニア [1]にして、此の女が臆面なく裁判上の申立を為して法務官を苦しめたる為め遂に右の告示の制定を見るに至りたるなり。不幸に付ては法務官は両眼の失明者を無能力とせり、何故となれば盲者は法務官の徽章を見ることを得ざるが故に之に対して敬意を欠くの虞あればなり。ラベオーの伝ふる事実に依るもアースプレナス、ノヌスの父なる盲者プブリリウスが裁判上の申立を為さんとしたるに当りブルツスは其の牀机を転回して之を聴取することを拒みたりと云ふ。但し盲者は他人の為めに裁判上の申立を為すことを得ずと雖も元老院議員たる家柄を保持し又審判人の職務を執ることを得。然らば盲者は亦政務官の職務をも執ることを得べきか。是れ熟考を要すべき点なり。盲者にして政務官の職務を執りたる一の実例あり、即ち盲者アープピウス・クラウヂウスは公儀に参与し元老院に於てピルルスの俘虜に関して極めて峻烈なる意見を披瀝したり。然れども最も適切なる規則としては盲者は其の一旦執りたる政務官の職を継続し得べしと雖も決して新たに政務官の候補者たることを得ず、此の規則は数多の実例の認むる所なり。
【注】
[1]訳注、此の婦女に付いてはVal, Maximus, 3, 2. Pauly Wissowa, R. E. III, 1589 参照
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】