【法文】
学説彙纂第3巻第1章第1法文第6項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Ulpianus libro sexto ad edictum
ウルピアーヌス(告示註解第六巻)
【翻訳】
法務官は又婦女に対するが如き行為を自己の自体に受くることを忍容したる男子 [1]にも他人の為めに裁判上の申立を為すことを禁ず。然れども、追剥又は敵人の強制力に因りて此の如き暴行を蒙りたる場合には汚点を附せざるものとす。ポームポーニウスの説も亦然り、頭格刑の判決を受けたる犯人も他人の為めに裁判上の申立を為すことを得ず。又元老院議決 [2]に依れば、誣告の公訴に於て有罪の判決を受けたる者は下級裁判官の法廷に於ても申立を為すことを得ず。猛獣と格闘するの目的を以て自己の労務を賃貸したる者も亦他人の為めに裁判上の申立を為すことを得ず。茲に謂はゆる猛獣とは動物の種類に付て云ふに非ずして寧ろ特定の動物の猛悪性に付て云ふものとす、例へば獅子其の他の動物にして牙を有するものと雖も馴致せられたるものは茲に謂はゆる猛獣に非ざればなり。前に述べたる所に由りて之を観れば単に自己を賃貸したるの事実あるときは実際に格闘したると否とを問はず汚点を附せらるるものとす、然れども自己の労務を賃貸したるに非ずして自ら格闘したる者は責を負はざるべし。何故となれば責を負ふべき者は猛獣と格闘したる者に非ずして其の目的の為め自己の労務を賃貸したる者なればなり。終りに、古法学者の説に依れば賃金を得ずして単に自己の剛勇を顕はさんが為め猛獣と格闘する者は責を負はず但し演技場に於ける表彰を甘受したるときは此の限に在らず予も亦此の如き例外の場合に該当する者は汚点を免れずと思惟す。又野獣を猟せんが為め若は附近地を害する野獣と演技場以外に於て闘はんが為め自己の労務を賃貸したる者は汚点を附せらるること無し。要するに法務官は自己の猛勇を顕はさんが為めに非ずして動物と闘ひたる者には自己の為めに裁判上の申立を為すことを許すと雖も他人の為めに之を為すことを許さず。然れども此の如き人々が後見又は保佐の任務に従事するときは其の被保護者の為めに裁判上の申立を為すことを得しむるを極めて中正を得たるものなりとす。何人と雖も如上の規定に反する行為ありと証明せらるるときは他人の為めに裁判上の申立を為すことを禁ぜられ且つ非常手続に基き審判人の裁定する罰金を科せらるべし。
【注】
[1]訳註、英訳(百四十頁)には「自然に反して婦女と同様の用を為したる男子」とあり
[2]訳註、此の元老院議決の名不明
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】