【法文】
学説彙纂第3巻第5章第33(34)法文
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Paulus libro primo quaestionum
パウルス(質疑録第一巻)
【翻訳】
ネセンニウス・アポルリナーリスは茲に一書をイユーリウス・パウルスに呈して教を乞ふ、一祖母あり其の孫男の事務を管理したるに、両者共死亡の後祖母の相続人等は孫男の相続人等より事務管理の訴権に依りて訴へられたり、祖母の相続人等は孫男に給付したる扶養料を以て相殺せんことを抗弁したり、之に対して祖母は曾て扶養額決定の判決を請求したること無く又此の如き判決の附与せられたること無ければ自ら愛情の然らしむる所に従ひて其の財産中より扶養料を給したるものなりとの答弁あり、且つ母が其の子を扶養したる場合には愛情の発露に由りて自ら出費せる扶養料の返還を請求することを得ざるは従来確定なる旨の陳述あり、相手方は之に対して母が自己の財産中より扶養料を支出したることの証明せらるる場合には以上の規則は適当なりと謂ひつべきも本問の如き祖母が孫の事務を管理したる場合には孫の財産中より之を支出したりと見るを以て寧ろ穏当なりと主張したり。是に於て、扶養料は両人の財産中より支出せられたるものと認むべきものなりや、予は貴下が最も公平なりとせらるる結論を聞かんことを希ふ。予は左の如く解答したり、本問は事実如何に依りて決すべきものなり、予は母の場合に付て定められたる規定は絶対に遵守せらるべきものなりと思考せず。例へば母が其の息男自身又は其の後見人を訴ふべしとの意思を以て其の息男を扶養せることを公然言明せる場合もあればなり。又例へば息男の父は外国に於て死亡したるに母は其帰国を期待して息男及び其の奴隷を扶養したりとせん。此の如き場合に於ては事務管理の訴権が未成熟者其の者を相手方として附与せらるべきものなりと神皇ピウス・アントニーヌスは規定したり。故に此の問題は事実問題なるを以て祖母又は其の相続人等が扶養料の相殺を申立つるときは予は之を聴取すべきものと言はんとす、祖母が費用計算書中に扶養の費用を記入したること明らかなるときは殊に然り。扶養料は両人の財産中より支出せられたりと認めらるべしとの見解に至りては予は決して之を容認すべきものに非ずと思惟す。
【注】

【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】