【法文】
学説彙纂第3巻第5章第34(35)法文序項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Scaeuola libro primo quaestionum
スカイヴオラ(質疑録第一巻)
【翻訳】
離婚後に於て前夫は前妻の事務を管理したり、此場合には前妻は「嫁資」訴権に依るのみならず又事務管理の訴権に依りて嫁資を請求することを得、但し事務管理の訴権に依るは前夫が管理中に嫁資を返還するの資力を有したるときに限る、然らざれば前夫が嫁資の返還に応ずることを得ざるも之に責を帰することを得ざるを以てなり。然れども前夫が財産を喪失したる後と雖も事務管理の訴権は尚、十分に有効なるべし、之に反し前夫が「嫁資の」訴権を以て訴へらるるときは免訴せらるべきものとす。但し事務管理の訴権に付ては或制限を守らざるべからず換言すれば「被告の資力の限度に於て」救済を請求するの此の訴権は「被告が後に資力を失ふとも」管理を為せる当時に支払ふことを得べかりし場合に於てのみ許すべきものとす、何故となれば被告は所要額を得んが為め即時に其の財産を売却せざりしの故を以て直ちに之を義務違反とすべきに非ざればなり、要するに被告が有責たるには処置を為すべかりし若干の期間に於て何等の処置をも為さざりしものと認めらるべき事実が存在することを要す。其の際被告が未だ管理任務を完了せざる間に嫁資たる物が喪失したるときは被告は到底之を返還し得ざる場合と同じく事務管理の訴権に依りて責を負はず。又縦ひ前夫の資力が十分なる場合と雖も事務管理の訴権は許されず何故となれば其の資力が不十分と為るべき危険あり得べければなり。
【注】
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】