【法文】
学説彙纂第3巻第5章第37(38)法文
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Tryphoninus libro secundo disputationum
ツリフオニーヌス(質疑録第二巻)
【翻訳】
無利息にて金銭を借入れたる者其の債権者の事務を管理したり、此の場合に借主は自己に対する事務管理の訴訟に於て借入金の利息を給付すべきものとせらるべきや否やが疑問とせられたり。予の解答にては若し此の事務管理者が其の任務として自己より金銭を取立つべきものなるときは利息を負担すべきものとす、然れども若し借入金の履行期が事務管理中に未だ到来せざるときは利息を負担するに及ばざるべし、又若し支払期が既に到来したるに其の管理せる事務の本人なる債権者の計算書に借方として自己の債務額を記入せざるときは事務管理者は誠意裁判に於て利息を給付すべきものと決定せらるべきことを至当とす。然らば利息の割合を如何に定むべきかを茲に考察するの要あり、其の債権者が他人に利足附にて貸付けたると同一の率とすべきか、又は最高率の利息とすべきか、何故となれば或者が其の被後見人又は被管理者の金銭を又は市の政務官が公金を自己の用に供したるときは諸神皇の勅定したるが如く最高率の利息を負担せざるべからざればなり。然れども或者が其の管理行為より得たる金銭を所持するに非ずして友人の事務を管理する以前に其の者より之を借入れたる場合は趣を異にす。抑も右の勅法に規定せる人々は無償堅実且つ絶対に自己の利益を図らざる誠実を用うべき責を負へる者なるが故に、濫りに好機を利用したりと認めらるるときは其の制裁に代へて最高率の利息支払を強要せらるるものなり、之に反し現に問題たる管理者は正当なる方法に依り他人より金銭を借入れ而して単に其の債務を履行せざるの故を以て利息に付て有責の判決を受けんとするものにして其の管理せる事務より得たる金銭を自己の為めに流用したるの故を以て然るに非ず。且つ債務が今始めて成立するか又は債務者が従前より債務を負ひたりしかは其の間に大なる差異を生ず、後の場合に在りては無利息の債務を利息附の債務たらしむれば足れり。
【注】
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』(有斐閣、1938年)
【備考】
春木訳「利足」の部分は「利息」の誤りと思われる