【法文】
学説彙纂第4巻第3章第7法文第8項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Ulpianus libro undecimo ad edictum
ウルピアーヌス(告示註解第十一巻)
【翻訳】
一奴隷あり自由を得るの報償として締結せる約束の履行担保者を若し自由を得れば其の者の債務を承継すべしとの条件を以て其の主人の為めに設置したり、然るに奴隷は解放を受けたるも債務の移転を承認せず、ポームポーニウスは其の著書に記して曰く此の場合には保護者は被解放者に対して悪意の訴権を有す、然れども若し保護者の責に帰すべき事由に因りて債務の移転なかりしときは保護者の請求は債務者の抗弁に依りて排斥せらるるものと云はざるべからずと。予は茲に一疑問を有す、即ち他の訴権が存在するとせば[1]如何にして悪意の訴権が附与せらるべきか。或は云はん若し保護者が奴隷を担保せる其の債務者を訴ふるときは其の請求は抗弁に依りて排斥せらるるが故に此の如き訴権は決して訴権に非ずとの理由を以て悪意の訴権は附与せらるべきものと云はざるべからずと、然れども保護者が奴隷を担保せる其の債務者に対する訴権は自己が被解放者を債務担保者として承認せざる場合にのみ抗弁に依りて排斥せらる。債務担保者が被解放者に対して悪意の訴権を有すべきは明かとす、又若し債務担保者が無資力なるときは主人は被解放者に対して悪意の訴権を附与せらるべし。[2]
【注】
[1]訳註、保護者は担保者たる債務者を訴ふることを得
[2]訳註、(八)の解釈に付ては Pothier, Pandectae Tomus Tertius PP. 254-255, 1819 参照
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』有斐閣(1938)
【備考】