【法文】
学説彙纂第4巻第3章第3法文第4項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Idem(Ulpianus) libro undecimo ad edictum
同人(告示註解第十一巻)
【翻訳】
尚、考究すべきは家長のみ原状回復の救済を受くべきものなりや家男も亦然るやの問題なり。此問題を生ずるは事実財産に関する事件に付て家男をも救済すべきものなりと云ふときは其の結果は家男を経由して成年者即ち家男の父をも救済することと為るを以てなり。是れ決して法務官の目的なりしに非ず。何故となれば法務官が其救済を与ふべきことを約したるは未成年者に対してにして成年者に対してに非ざればなり。然れども予は未成年の家男は自己に利害関係ある場合例へば債務を負ひたる場合に於てのみ原状に回復せらるることを得との意見を最も正当なりと思惟す。随て若し家男が父の命に依りて債務を負ひたるときは父は常に債務全部に付て訴へらるることと為るべし、而して家男は権力に服する間と雖も否な家長権免除を受け若は相続より廃除せられたる後と雖も其の支払能力の限度に於て訴を受け得べく「又父の権力に服するときは父の意に反するも有責の判決に因りて訴を受け得べきが故に」、若し訴へらるるときは救済を請求することを得べし。然れども此救済は例へば家男の保証人の利益と為るの慣例往々あるが如く父の利益とも為るや否や是れ考究すべき問題なり、予は父の利益たらざるべしと思惟す。故に若し家男が訴へらるるときは救済を請求することを得、(若し債権者が父を訴ふるときは父は救済を受けず)但し家男が借金を受取りたるときは此の限に在らず、何故となれば家男が父の命に従ひ消費貸借の為めに借金を受取りたるときは其の家男は救済せらるること無ければなり。同じく家男が父の命に依らず契約を締結し不利益を受けたる場合に於て若し父が事実財産に付て訴へらるるときは家男は原状回復を受くることを得ざるべし。然れども家男は若し自ら訴へらるるときは原状に回復せらるることを得べし。吾人は家男が事実財産に付て利害関係を有すと云ふの事実に重きを置かず、何故となれば事実財産は家男よりも寧ろ父の利害関係頗る多ければなり但し、或場合には家男が直接利害関係を有することあり得べし、例へば父の財産が債務の為め国庫に依りて占有せられたるときの如し、此の場合にはクラウヂウスの勅法に依りて事実財産は家男の利益の為めに父の財産より分離せらるべきものなり。
【注】

【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』有斐閣(1938)
【備考】