【法文】
学説彙纂第4巻第4章第38法文序項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Paulus libro primo decretorum
パウルス(判決集第一巻)
【翻訳】
アイミリウス・ラーリアーヌスはオーヴヰニウスよりルチリアーヌス土地[1]を解除条件附にて買ひ左の如き条件を以て代金の一部を与へたり即ち若しアイミリウス・ラーリアーヌスが該土地を買取りたる時より二ヶ月以内に代金残額の半額を支払はざりしときは売買は解除せらるべく又若し次の二ヶ月以内に代金の残額全部を支払はざりしときも同じく売買は解除せらるべしと云ふこと是れなり。然るに前の二ヶ月の満了前にラーリアーヌスは死亡し十二年未満の少女ルチリアーナは其の相続を為し而してルチリアーナの後見人等は期間内に約束代金の履行を怠りたり。売主は後見人等に数回警告したる後、売買契約締結後一年を経て其の土地をクラウヂウス・テレマクスに売却したり。因りて未成熟女は原状回復の申請を為したるも其の申請は法務官の裁判所に於ても市長の裁判所に於ても却下せられたるを以て上訴したり。[2]予は原判決[3]を正当なりと思惟したり何故となれば売買契約の締結者は其の未成熟女に非ずして其の父なればなり、然れども皇帝は解除期は未成熟女の代りに到来し而して其の女の為めに売買の約款を遵守せざりし事態を生じたりとの理由に依りて動かされたり。予は寧ろ売主が協定の解除期限到来の後に後見人等に警告して代金を請求せるは自己の利益たる条件を抛棄したるものと云ふべしとの事実を以て未成熟女に原状回復を許すの理由と為すに如かずと主張したり、且つ予は債務者の死亡後に履行期限が経過したる場合に未成年者の債権者が質物を売却したる場合と同じく此の場合父の死亡後に期間が経過したるの点に重きを置かずと述べたり。然れども皇帝は解除約款を好まざりしが故に遂に原状回復の宣告を与へたり。皇帝が此の如き判決を与へたるには尚、他に一理由あり即ち原状回復の申請を為さざりし従前の後見人は不誠実なりと宣言せられたること是れなり。
【注】
[1]訳註、特定の土地
[2]訳註、皇帝に
[3]訳註、パウルス
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』有斐閣(1938)
【備考】