【法文】
学説彙纂第4巻第9章第3法文第1項
【法文の典拠】
Corpus Iuris Civilis Vol. I. (ed. 14) Mommsen-Krüger, Digesta, MCMXXII
【inscriptio】
Ulpianus libro quarto decimo ad edictum
ウルピアーヌス(告示註解第十四巻)
【翻訳】
法務官は曰く、『船主が之を返還せざる場合には本職は引受人を相手方とする訴権を附与すべし』と。此の告示に依りて発生する訴権は事実訴権なり。然れども此の訴権は果して必要なりや否や何故となれば此の如き原因に付ては市民法上の訴権に依り訴へ得べければなり、即ち金銭上の報償ある場合には賃貸借訴権に依りて訴へ得らるればなり。換言すれば若し船舶全体が賃貸せられたるときは賃借人は現存せざる物品に付ても賃借訴権に依りて訴ふることを得べく、之に反して若し船主が有償にて運送の為め物品を引受けたるとき貸主訴権に依りて訴へらるべし、又若し船主が物品を無償にて引受けたるときはポームポーニウスは寄託訴権に依りて訴へらるべしと説けり。故にポームポーニウスは市民法上の訴権が存在するに拘らず何故に名誉官法上の訴権も採用せられたるかを怪しみ、『但し法務官が上記の人々の不誠実を禁制せんが為め特に注意を加へたることを示すの目的に出でたるものなるときは此の限に在らず。何故となれば賃貸借に於ては過失に付て責あり寄託においては悪意のみに付て責あり而して此の告示に依れば物品の引受者は縦ひ自己の過失なくして物品が滅失し又は損害を受けたる場合と雖も絶対に責を負ふべければなり但し不可抗力は此の限に在らず』と。是を以てラベオーは其の著書に記して曰く『若し何物にても難船又は海賊の襲撃の為めに滅失したるときは船主に抗弁権の附与あるは不衡平に非ず』と。駅舎又は旅店に於て不可抗力に因る事件が発生したる場合に於ても規則を同ふすと云はざるべからず。
【注】
【訳者】
春木一郎
【出典】
春木一郎『ユースティーニアーヌス帝学説彙纂プロータ』有斐閣(1938)
【備考】