【法文】
学説彙纂第46巻第1章第21法文[相続人に類する地位の取得と訴権の譲渡、保証債務を二重に負担する場合、債権者主債務者間の相続、債権者保証人間の相続]第2項
【法文の典拠】
Th.Mommsen, Digesta Iustiniani Augusti vol.2, 2.Aufl., Berlin 1963
【inscriptio】
Africanus libro septimo quaestionum
アフリカーヌス(質疑録第七巻)
【翻訳】
私はあなたの奴隷に金銭を貸し付け、あなたはその奴隷を解放した。その後、私はこの被解放奴隷を保証人にした。このとき、もし被解放奴隷によって保証された債務が、あなたが[私に対して]一年間は負担するところの債務 [1] であれば、被解放奴隷は[保証]債務を負担すると、彼[ユーリアーヌス]は述べた [2] 。これに対して、被解放奴隷が自己の自然債務を保証したのであれば、保証は無効というべきである。なぜならば、「何人も自己を主債務者とする保証債務を負担しえない」、と解されるからである。しかしながら、もしこの被解放奴隷が、自己の[負担する自然債務の]保証人を相続したならば、保証債務は存続すると、彼[アフリカーヌス]は考えた。それゆえ、市民法上の債務 [3] が消滅しても [4]、自然債務は存続するため、[奴隷は]弁済物を取り戻しえないのである。このことは、主債務者が保証人を相続した場合には、保証債務は消滅するとの扱い [5] と矛盾するものではない。なぜならば、そこでの理由は、市民法上の債務は同一人において二重に存在しえない、というものだからである。また、他方で、この保証人が被解放奴隷[主債務者]の相続人となった場合にも、保証債務は相続人に対する存在を続ける [6]。たとえ自然債務者[被解放奴隷]が、「自己を主債務者とする保証債務を負担しえない」のだとしても。
【注】
[1]特有財産訴権は、奴隷解放後も一年間の実用期間内は、旧主人に対して提起しうる(Ulp.D.15,2,1pr.)。
[2]Cf.Iuli.D.46,1,12; Venuleius D.14,6,18.
[3]保証債務のことと思われる。もしそうであるならば、この文言から、自然債務の保証は、市民法上の債務を発生させることになる。主債務たる自然債務と市民法上の保証債務とを、相続人たる被解放奴隷において競合させる実益は、被解放奴隷を保証債務に基づき訴求しうる点にあると考えられる。
[4]例えば、保証債務に終期期限が付されていた場合。
[5]Iul.D.46,1,14; Afr.D.46,3,38,5.
[6]主債務が自然債務でなければ、重い債務が軽い債務を消滅させるとの原則により、保証債務は消滅する(Iuli.in Ulp.D.46,1,5)。
【訳者】
遠藤歩
【出典】
法学会雑誌(東京都立大)第46巻1号 (2005年9月)
【備考】