【法文】
学説彙纂第46巻第1章第49法文[遺言による解放と悪意の抗弁、共同相続による法上当然の分割と分別の利益による裁判上の分割、弁済場所と黙示の期限]第1項
【法文の典拠】
Th.Mommsen, Digesta Iustiniani Augusti vol.2, 2.Aufl., Berlin 1963
【inscriptio】
Idem (Papinianus) libro uicensimo septimo quaestionum
同人[パーピニアーヌス](質疑録第二七巻)
【翻訳】
保証人の二人の共同相続人のうち、一方が錯誤により全額の弁済をなした場合に関し、学者たちは、弁済者は不当利得訴権を有し、それゆえ[他の]共同相続人の債務は存続する、と考えている。もっとも、学者たちは、不当利得訴権が生じない場合 [1] にも、共同相続人の債務存続を是認している。なぜならば、債権者が[返還]義務があると誤認して [2]、全額の弁済者に半額を返還しても、債権者はその不当利得訴権を有しないからである [3]。しかしもし、例えば二〇金について、二人の共同保証人が設定され、その一方の保証人の相続人二名のうち一名が、全額を債権者に弁済した場合、もちろん一〇金については、法上当然に債務を負担していなかったのであるから [4]、不当利得として取り戻しうる。しかし、その余の五金についても、もし他方の共同相続人が有資力ならば、取り戻しうるのか [5] を、検討してみよう。これはつまり、当初[弁済前]から、保証人の相続人の一方または双方が、[被相続人たる]保証人自身と同じように審理され、その結果、共同保証人が各自の部分について[のみ]訴求されたかの如く扱うことができるか、という問題である。しかし、右記両事案[保証人自身またはその相続人が、審理前に弁済した事案]では、弁済は非債の金銭になされたものではないので、取り戻されるべきではないとの見解が、より正当かつ有益である。というのも、神皇ピウスの手紙は、各保証人が全額弁済をする前提にたっているからである [6]。
【注】
[1]例、弁済者悪意の場合。
[2]例、弁済者が善意であると誤信した場合。
[3]自然債務の弁済になるから。Cf.Accursius, op.cit., p.1105.
[4]二〇金の保証債務が共同相続人間で法上当然に分割されるから(十二表法第五表の九)。
[5]分別の利益により、共同相続人間で二分割される保証債務を一〇金と考えるならば、一五金を取り戻せることになる。Cf.Ulp.D.46,1,27,3.
[6]分別の利益の主張がなければ債務は分割されない(cf.Gai.D.46,1,26)。
【訳者】
遠藤歩
【出典】
法学会雑誌(東京都立大)第46巻1号 (2005年9月)
【備考】