【法文】
学説彙纂第46巻第1章第59法文[弁済による質権者たる地位の承継]
【法文の典拠】
Th.Mommsen, Digesta Iustiniani Augusti vol.2, 2.Aufl., Berlin 1963
【inscriptio】
Idem (Paulus) libro quarto responsorum
同人[パウルス](解答録第四巻)
【翻訳】
パウルスは答えて曰く、保証人は、共同保証人達の供した質物を[全額弁済により]取得したとき、質物の買主ではなく、質権者の地位に就くとみられる [1]。それゆえ、果実および利息が考慮に入れられるべきである [2]。
【注】
[1]質物譲渡を売買と構成すれば、売却により質権が消滅するため、質権設定者は、原則として、買主(保証人)から質物を取り戻すことはできない(cf.Paul.sent.2,13,4)。 ただし、質権者と買主が設定者への返還を合意した場合(Ulp.D.13,7,13pr.)や、質権設定者と保証人の間の内部関係(保証人が受任者または事務管理人として、取得物引渡義務を負う場合、Paul.D.17,1,59,1)は、売買構成でも設定者は質物を取り戻しうる。本法文は、質権設定者が共同保証人であり、設定者の質物取戻権を保障するためには、質権者たる地位の承継という構成が必要となる。そして、質権者たる地位の承継という構成がとられる際には、質権の被担保債権の譲渡も併せて観念される(Alex.Sev.C.8,40(41),11(a.229); Gordian.C.8,40(41),14,1(a.239); cf. Paul.D.46,1,36)。なお、売買構成によっても、後順位質権者の弁済提供権(ius offerendi)は保障されている(Pap.D.20,5,2; Marci.D.20,5,5,1)。
[2]質権設定者たる共同保証人は、質物から生ずる果実をまず利息に充当し、次いで元本に充当して計算した残額を、質権者(弁済した保証人)に支払うことにより、質物を取り戻すことができる(cf.Ulp.D.36,4,5,21)。保護は、質直接訴権(actio pigneratica directa)である。
【訳者】
遠藤歩
【出典】
法学会雑誌(東京都立大)第46巻1号 (2005年9月)
【備考】