【法文】
学説彙纂第46巻第3章第98法文第8項
【法文の典拠】
Th.Mommsen, Digesta Iustiniani Augusti, 2 Bde, Berlin 1868/70
【inscriptio】
Paulus libro quinto decimo quaestionum
パウルス
【翻訳】
私が他人の土地の供与を諾約し、次いで土地所有者が同地上に建物を建てた場合、問答契約は無効に帰するのかが問われた。私[パウルス]の解答は、以下の通りである。他人の奴隷の諾約がなされ、右奴隷が解放された場合には、諾約者は解放される。解放奴隷が何らかの法律によって再び奴隷となった場合には、彼を訴求できるとのケルススの見解は、採用しえない。なぜならば、債務を永久に設定することは不可能であり、一旦奴隷が解放されれば、他の人間になったとみなされるからである。[ケルススによって]異なる事案が引き合いに出されている。すなわち、あなたが[供与を]諾約した[他人の]船を、その所有者が解体し、次いでその木材を使って再び船を築造した場合、あなたは責を負っている、と。[ケルススは]右の船はあなたが諾約したものと同一であり、債務は消滅しておらず、一旦停止したにすぎないと解する。[しかしパウルスの見解によれば、]もし船を解体する際に、木材を違う目的で使用することが意図され、そして船が新たに造られたならば、解放された奴隷が他の人間となるのと同様に、船も別の物となる。以上に対して、建物が建てられた土地の場合は、別である。なぜならば、その物自体が消滅していないからである。それゆえ、依然として土地を訴求しえ、その評価額が支払われるべきである。というのも、建物は土地の一部であり、附着した建物は土地に吸収されるからである。これと異なるのは、諾約された奴隷が敵の捕虜となった場合である。この時は、期限付債務と同様に、帰国権に基づき帰国する前は、訴求されえない。つまり、債務が停止しているのである。これに対して土地は、建物が建てられた部分においても、依然として存在する。最後に、十二表法は、建物に用いられた木材は所有権に基づく取戻しの対象となるが、建物を解体することを禁じて、その価額の支払いを命じている。
【注】

【訳者】
遠藤歩
【出典】
法学会雑誌(東京都立大)第45巻1号 (2004年7月)
【備考】